えんがわさぼう
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(こううんりゅうすい)
行雲流水 雲水=修行僧の意(空行く雲、流れる水の如く人生の艱難辛苦に執着せず、身を削り精進する)

 我々は、茶に何も混ぜずに飲む。至極当然に思うかも知れな
い。が、海外で混ぜ物の無い茶を探す苦労をされた方も少なく ないのではないか?
 世界中で最も消費量が多く、最も新しく生まれた茶である紅 茶でさえも、そのまま(何も混入しない)で、飲む人口は少ない 。ここ10年位、旅先の中国や東南アジアで買い求められたペ ットボトルの茶を、初めて飲んだ時に、その甘さに驚かれた方 もいらっしゃるのでは?
 何のことは無い。日本人が茶に何も混ぜずに飲む珍しい民族 なのだ。

 医食同源の発信国、中国では冷たい茶を飲む習慣は無かった 。理由は前回記した通りで、茶樹の原産地が南国だからだ。南 国出身の食物は身体を冷やす。原理は単純で、例えるならば、 麻が涼しい理由は何故か考えてみよう。絹だって蚕を守る
“揺籃(ゆりかご)”の素材であって、決して人間の着物にな るとは思わなかっただろう。要するに、求められている細胞の 構造が根本から違うという理屈だ。

 話を元に戻そう。実際に我々は茶に何も混ぜずに飲んでいる
。初期の抹茶は塩を混ぜていたようだ。中国でも抹茶以前の煎茶の時代には、団茶(だんちゃ)という固形茶を煎じて飲んで
いた。固形茶とは、茶葉を茹でて固めて乾燥した状態で保存する。丸く固めるので団茶と呼ぶ。当時は香料を混ぜて油を塗
り、献上品にもした。

 前々回、茶は漢方薬として中国へ入ったと記した。頭痛や二日酔い、食中りに応じて必要な分の茶を削り取り、粉にして
煎じて飲んだ。よって煎茶と呼ぶ。
そして、漢方薬を煎じる陶器製の缶(入れ物)を使用するので薬缶→ヤカンと呼ぶ。
さらに、煎じた液体の色を茶色と呼んだ。
それを茶碗に汲んで飲んだ。
特に色が判りやすい白や青い色の器が人気だったらしい。それが唐の時代までの事。普段の言葉は意外と古い歴史を残して
いる。(次号に続く…)