前々回、晩茶を何故に番茶と表さないのか。それは、晩い
(おそい)意味を持つと説明した所から始めよう。
その理由は、昔の茶摘みが年に1回若しくは2回だったから
だ。順序を追って説明すると、茶樹は南国の出身で高さ10
メートルを優に越すほど育つ喬木(高木)だ。幹もそれなりに
太い。一枚の葉の大きさも成人女性の靴のサイズと大差無い。
そして、生食や漬物として利用されたのが嚆矢。南国では現代
もそのまま利用されている。そんな大木を寒い土地で育てると
味が締まる。日本はチャの育つ北限と思って頂いて差し支え
ない。
また、南国では平地で育っているはずの茶樹を、高い山へ
持って行き育てると香りが立つ。更に南国の強い陽射しを浴び
て育つよりも、日蔭で遮光された葉は甘みを蓄積する。日光が
足りないと光合成が働かずに枯れてしまう一般の植物とは異な
り、僅かな光を求めて葉の表面を薄く拡げる。だから、良い茶
は薄い葉がしっかりと撚(よ)れているので、湯を注いでも直ぐ
には拡がらず、何煎も楽しんでいる間に、ゆっくり元の葉の形
に開く。 |
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