えんがわさぼう
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(かくぶつちち)
格物致知(物事の本格・本質を求め英知に至るなら、君子への道が開けるだろう)

 茶葉は匂いが移り易い事は御存知だろうが、昔は「茶は一里
(約4km)先の夕餉(ゆうげ)の支度の匂いを盗む」と云われ
た。民家が近くに在ってはならなかった。

 肥料についても「牛糞を使えば、その茶葉は獣臭く、魚粉な
ら魚臭く、鶏糞を使うなら茶葉は鳥臭くなる」そうだ。肥料は
植物由来が良いらしい。無農薬や有機という次元では無い。

 現在は窒素肥料の過剰施肥に因る茶園近隣の環境破壊が問題
となっている。理由は品評会において好成績の茶葉に窒素成分
が多かったところから農家の窒素信仰が始まった。

特に玉露で有名な福岡県の八女(やめ)などの茶園近くでは、湖
沼に生物が居なくなり河川の魚が大量に浮いた。近隣では井戸
水を飲んで舌が痺れたなどの報告がある。だから、山の向こう
を浮遊する放射性物質を取り込む。紙上の事件は当然とも言え
る。

 先述の通り、本来の茶樹は清らかな山野の空気をたっぷりと
吸い込み、岩盤に根をめり込ませて豊富なミネラルを吸い上げ
、余り日光の当たらない虫さえ少ないくらいの標高の山で育ち、枝1本から
数枚の葉を、樹に対して負担の掛からない程度を我々の為に分けて戴くもの
が最良かと思う。

茶農家は葦や藁などの肥料を背負い、徒歩で(排ガスを撒き散らす車両の通
る道路は無い)麓(ふもと)から高い山まで登り、毎日世話をして年に一度だ
け茶樹からお裾分けを戴く。時には収穫直前の遅霜で一年間の世話が無駄に
なる場合もある。(事実、数年前にあった)更には茶樹を冬の寒さから守る
為、畝間に防寒の敷藁を。春先には太陽光を遮る事により葉に甘みを貯める
為に、急斜面の畑全体に竹で骨組みを造作し御簾(みす)を掛ける。
簾(すだれ)を編む作業も大変だ。風雨に晒され幾年も持たない。編むのは
冬の仕事のひとつ。これだから茶は高価で当たり前なのだと思う。
(他の農作物とて同様だが)

 本来、高速道路や新幹線の車窓から見られるような場所で育てるものでは
無かった。